10年に1度しか使われない林道をマウンテンバイクコース化したい
知人から譲ってもらったことがきっかけで2021年からマウンテンバイクに乗り始めました。
愛車はトレックのプロキャリバー8です。砂利道や段差なんてお構いなしに進むことができるラフ&タフさが気に入ってます。
10年に1度しか使われない林道が張り巡らされた西粟倉村
西粟倉村は主要な産業が林業ということもあり、村の山々には林業用道路(林道や作業道)が張り巡らされています。
しかし、50年前に植樹した人工林を管理・伐採するための道なので、10年に1度しか使われないこともしばしば。
農業で例えると、畑(山)で育てた野菜(杉・桧)を収穫するため、軽トラが入れるような仮設道をつくるようなイメージです。
10年前に林業機械が通ったっきりの作業道はミツマタが群生して道を塞いでいたり、岩が転がっていたり、土砂崩れが起きていることもあります。
「山で木を育て伐るだけではなくて、山に入り遊ぶ人を増やせたら面白いよね」と株式会社百森(百森社)の田畑さんが取り組んでいるのが林道や作業道のMTBコース化です。
登山道ではないのでハイカーにとっては退屈な林道でも、MTBerにとっては気持ち良く走ることができるコースにできるのではないかと考えています。
西粟倉村は2008年に百年の森林構想を掲げ、村有林・民有林の集約施業に取り組んでいますが、百森社の仕事は西粟倉村内の山林を設計管理することです。つまり、西粟倉村のありとあらゆる山や林道を把握しています。
「一緒に何ができるか考えませんか?」と田畑さんから声を掛けていただいて(ありがとう!)、一緒に地図を見てあーだこーだ話し合ったり、一緒に山に入ってMTBでずっこけたりしながら開発と称して遊んでいます。
山はみんなのものじゃなくて所有者のもの
いろんな話を見聞きして、日本のMTBコースの課題を洗い出してみました。
🚵♂️日本のMTBコースの課題
- 有料のMTBコースには、閑散期のスキー場を活用したリフト付ダウンヒルコース(ex. UP MTB PARK IN KANNABE)や戦前林業の古道を活用したコース(ex. 山伏トレイルツアー)等がある。一方で、毎週末のように訪れることのできるホームマウンテン(と称する遊び場)を欲するMTBerは多い。
- しかし、山はみんなのものではなく所有者のもの。日本は小規模山主が多いため、複数の山林所有者が介在するコースがほとんど。不法侵入するな!と言われればコースとして使えなくなる。この問題は登山やトレイルランニングにも共通する。
- そのため、ホームマウンテンをもつMTBerでもコースのGPSマップをSNSに公開することはしない。なぜなら山林所有者や他MTBerに知られたくないから。あくまで自分や仲間内など閉じたコミュニティで共有する。
- MTBコース化するために山林整備(伐木や草刈り)をするMTBerもいるが、山林所有者とのコミュニケーションの量や質は個人差が大きい。勝手に人の山に入って勝手に木を切っているケースもある。
ざっと挙げたこれらの課題に対し、以下のようなアプローチができると山林所有者もMTBerも互いに嬉しい山林利用ができるのではないでしょうか。
🚩林業のMTBコース化で目指すもの
- MTBerが利用することで山林所有者に利益が生まれる
- 新たなコースを開拓できる等、MTBerが山林整備に関わりやすい
- 山林所有者も了承するコースなのでSNSにGPS公開でき、MTBerが仲間と一緒にライドを楽しめる
とんでもねえコースをつくってやったぜ!と上級者向けにアプローチしたいわけではなく、山林所有者とMTBerの関係性が良好なコースをつくることが狙いです。
MTBフリークと林道グループライドしてみた
最近知り合ったMTBフリークな大学教授が関西の仲間を村へ連れてきてくれました。
西粟倉村の林道にMTBコースとしての価値はあるのか。MTBerの感触を探るべく、いくつか検討しているコースをグループライドしました。
すでに何度も走っている良コースもあれば、施業が15年前でおこなわれており現状どんな状態か不明というアドベンチャーなコースもありましたが、新たな発見にあふれる素晴らしい時間でした。
なによりいつも1人でMTBに乗っているので誰かと一緒に山を走っているというだけで嬉しくなりました。
「このふかふか広葉樹は最高だね」「急傾斜過ぎて人力では登れないね」と和気あいあいと地図を片手にMTBで漕ぎ進みました。
木材的価値はない松林がMTBerにとっては価値になる
筋肉痛になったお尻と太ももをさすりながら林道のMTBコースについて振り返ってみました。
🤨懸念点
- 倒木や岩が多く、MTB走行が困難なコースも多い(雑草に隠れて見えないことも多い!)
- 土砂崩れによって法面崩壊したコースもあり
- ミツマタが群生した作業道はMTBどころか歩行すら困難
🙂良かった点
- ふかふかの広葉樹林や尾根の松林など滑らかに下れるコースも多い
- 林道・作業道の接続が多く、コースを複数用意できる
- 高低差が大きく(最高標高1,100m越え)、10〜20kmのロングコースも確保可能
総じて言えるのは一筋縄ではいかないということです(泣)
落ち葉を掻いただけで走行できるコースはあるものの、MTBから降りることなく走り続けられるコースを数km確保するためには相当の整備が必要だということが分かりました。
一方で面白いのは木材的価値はない山林がMTBerにとっては価値になるということです。
印象的だったのは尾根沿いの松林です。傾斜や地面が滑らか。気持ち良く下ることができました。「この松林は良いですねえ!」とMTBフリークも大満足でした。
林業の適地適木を表す「尾根マツ・谷スギ・中ヒノキ」という言葉の通り、尾根には松が生えやすいものです。地面が肥えにくく、水気が少ない尾根でも育ちやすいのが松なんですね。
尾根沿いの松を伐り出しても木材としての価値は低いですが、MTBerにとっては気持ち良く下ることのできる良コースになりえるのですね。
まだまだ林道をMTBコース化したら面白いのでは?という仮設を検証するべくMTBで遊んでいる程度ですが、現状の整理も含めてキーボードを叩いてみました。